たこ焼き小僧珍道中vol.4

最初は僕一人の小さな小さな夢だった。

その未来図をおぼちゃんに聞いてもらいながら、僕はたこ焼きを毎日焼いた。しかし、いくら人からほめられてその気になったとは言っても、やっぱり12歳の子供。いつもいつもたこ焼きを焼いていると、さすがに飽きてくる。

そして僕は中学生になった。僕はなんとかして楽をする方法を考え、思いついたこと、それが「弟子をつくろう」というものだった。そんなときに現れる間の悪いやつというのが必ずいる。

それが田畑修治。僕の一つ年下だった。

いつものように店にいると、修治がたこ焼きを買いにきた。いきなり誘っていやがられると元も子もない。だから僕はとにかくたこ焼きを楽しそうに焼いた。どれだけおもしろいかを伝えるのが勝負。いかに人を本人の意志で巻き込むかが肝心だ。

「誘われたから」じゃなく、「自分から志願」という形を作るために、楽しさを演出した。ある意味、僕の巻き込み癖はこの頃から始まっていたのかもしれない。たこ焼き屋には、小さなカウンターがあって、丸いすが三つ。たこ焼きを焼きながら、楽しさを話すと、修治はノリノリになった。30分後にはカウンター越しに千枚通しを持ってたこ焼きを転がしていた。そして1時間後には店に入っていた。そして、日が暮れる頃、買い物袋を持って帰ってきたたこ焼き屋のおばちゃんに、「新しく弟子入りした、田畑修治です」と言わせていた。

こうして僕は自分の夢の実現と、少しだけ楽をするために、仲間を巻き込んだ。それからというもの、僕と修治はセットになって店をまわすようになった。安心しきってしまったのか、おばちゃんは店を離れて、買い物に行ったら何時間も帰って来なくなった。

三丁目の夕日のような風景で、小さな子供が店番をしている姿を想像してもらうと分かりやすいかもしれない。修治は僕と違ってまじめなやつだった。職人肌というのだろうか、商品に対するこだわりが人一倍強かった。

どちらかというと、僕は売る方が好きだったので、なかなかいいコンビだったと思う。僕は修治に夢を語った。こんな店にして、こうやってお客さんが来て…。すると、ある日、修治が僕に言った。

「しげちゃん、僕も一緒にやろうかな」

「まじで?やろうやろう!よし、大きくなったら二人でたこ焼き屋を作ろう!」

うれしかった。初めて僕の夢の理解者ができたことで、僕の夢はさらに一歩前進した。僕たちは高校生になっていた。修治は陸上の部活で忙しくなっていた。

いっぽうの僕は、問題を起こして部活を退部。たこ焼き以外はまったく真剣にやっていなかった。成績は270人中270番。下から一等賞だったが、親も僕には勉強しろとは全く言わなかった。「ここまでくると気持ちいい」と母も笑っていたくらいだ。