たこ焼き小僧珍道中vol.5

高校三年。僕の中では進路が決まっていた。

「卒業したら大阪にたこ焼き屋の修行に出る」と決めていたのだ。

ある日、そのことを修治に話すと、修治はその計画に反対した。

「しげちゃん、大阪じゃなくて東京に行こうよ」

「なんでよ、たこ焼き屋って言ったら大阪だろ」

「いや、東京にはすごい人がいっぱいいるじゃん。テレビだって全部東京だし」

「うん。そうだな」

 

あの頃の僕たちは、地方にもテレビ局があるなんて知らなかった。その頃は、『東京ラブストーリー』を始めとして、世の中にトレンディードラマというやつがはやり始めていた頃で、テレビ=東京というイメージだった。番組の最後に、懸賞のお知らせがいつも出ていて、「宛先は、東京港区六本木まで」という言葉がいつも流れていたので、「東京かー、だったらやっぱり六本木に行ってみたいな」くらいにしか考えていない田舎者だった。まさに東京は僕たちにとっての外国だった。

「修治、ところで何で東京?有名な店あるのか?」

と聞くと、修治はこう答えた。今思えばこの時の修治の言葉が僕に取っての人生の分岐点になった。

「しげちゃん、東京にはすごい人がいっぱいいる。大金持ちの息子もたくさんいる。しげちゃんは人と仲良くなるのが得意だからさ、そいつらと友達になって、僕たちのたこ焼き屋のスポンサーにしよう」

「スポンサー?なんだ、それ」

「あのね、僕たちの夢にお金を出してくれたり、応援してくれる人」

「そんな便利な人がいるのか?」

 

衝撃だった。僕は修治から、スポンサーについて詳しく聞いた。頭の中では、「永松君、君の夢を応援するよ」と、お金を出してくれる人の姿がポワンポワンと浮かんでいた。この一言で、僕は東京に行くことを決意した。さて、とは言っても、一体どうすれば東京に行けるのか?そこを考えていると、修治はこう言った。

「大学生が一番暇らしいから、しげちゃん、大学生になりなよ」

とりあえず東京の大学ならなんでもいい。帰ってその決意を話すと、父ちゃんからこう言われた。「茂久、おまえ大学ってどうやっていくのか知ってるのか?小学校とか中学校みたいに、行けば入れるものじゃないんだぞ」実の親から真顔でこう言われるくらい、僕は成績が悪かった。

でも、熱意を語ると、「まあ、勉強するならいいんじゃねえか」ということで僕はすぐさま本屋に行って単語帳を買った。しかし、いきなり単語を覚えたって大学に受かるわけじゃない。しかも、なんとそこで衝撃的な出来事が起きた。高校を卒業する単位が足りなくて、卒業延期になってしまったのだ。

修治と僕の計画は見事にくるった。まあ、どうせ受かってはいなかったとは思うけど、これにはへこんだ。

「修治、テンション落ちたぜ」

「大丈夫だよ、浪人すればなんとかなるよ」

と励まされながら、僕たちは次の春を迎えた。