人が喜んでくれる姿が自分の心にスイッチを入れる


 

僕は大分県の中津という小さな町で、「陽なた家」「夢、天までとどけ」という二軒を、福岡市の大名という場所で「大名陽なた家」「陽なた家茂虎」「博多屋台幸龍」という店を経営している。
僕の店は、スタッフのアットホームで家にいるような温かいサービスがウリの一つで、ありがたいことに、それを求めて県外からも、多くのお客さんが足を運んでくれるようになった。

 
しかし、いまは元気いっぱいのスタッフも、最初からそうだったわけではない。
とくに中津の店で働くスタッフは、初めてやって来た頃は、「自分の居場所などどこにもない」という絶望感を背負っている人がほとんどだった。
中津は、人口が旧市内で6万7000人、合併して8万人程度の小さな町。
昔は商店街も元気だったが、いまはすっかり廃れ、輝いている元気な若者がそもそも少ない。さらに、近辺に大学はないため、大学生のアルバイトを雇うことが困難。

高校はアルバイト禁止……。となると、僕の店で働いてくれる人は、ニートや引きこもり、あるいはグレて高校を退学になったような連中ばかりにならざるを得なかった。

 
正直、でたらめな奴らの集まりだった。
しかし、そんな彼らが、あっという間に変わる瞬間があった。

僕の店では、バースデーのお客様に対して、スタッフがうさぎの着ぐるみを被り、店を走りまわってお祝いする。その数は現在年間で3000件を超えるようになった。
そのときのウサギのぬいぐるみはは新人の仕事。どんなにひねくれていようが、生意気だろうが、気が小さかろうが、例外は許さなかった。
ところが、嫌々でも始めてみると、お客さんは、うさぎと一緒に写真をとったり、ハグしたりして大喜びしてくれるのだ。
すると、どうなるか。
店のバックヤードで着ぐるみを脱いだスタッフの目が、さっきまでとは明らかに違っているのだ。
「俺、こんなに感動したことない。こんな俺でも誰かに喜んでもらえるんですね」
誰かに必要とされる。自分の居場所を確認できた彼らは、僕が口うるさく指示など出さなくても、イキイキと自主的に動いてくれるようになった。これはどんな子でも変わらない。

 

人は誰かに喜んでもらったとき、必要とされた時、目にスイッチが入るようになっている生き物なのだ。